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アマツツミ プレイ感想

パープルソフトさんのゲーム、アマツツミ。
主人公が言霊(ことだま)と呼ばれる力を持つちょっと変わった学園物です。

前作クロノクロックも、時間を5分戻す時計を所有するだけの学園物でしたが、
今作は前作よりもシナリオ面を意識し、各ヒロインに本筋ルートといちゃいちゃルートが用意されています。
要するに基本は1本道ですが、各ヒロインの話が続き、各ヒロイン編の終りに選択肢が現れ、
次のヒロインの話に進むか、そのヒロインのいちゃいちゃルートに進むかを決めることができます。
このタイプの話は1本道の一番ラストの話が最も盛り上がるようにできているため、
尻トンボで終わりたくない人は、いちゃいちゃルートを先に進め、1本道の分岐は最後に選ぶのが常套手段になります。
まぁそんな中、感想です。
基本的に各ヒロイン編を順次進めていく形になるため、今回はエピソードごとの紹介、感想としたいと思います。

この先ネタバレ注意!









織部こころ 編

導入編。主人公について、ヒロインの紹介についてから始まり、
織部こころと母親の織部あずきを中心としたエピソードです。
主人公、誠は言霊(ことだま)と呼ばれる力を持ち、言霊使いが沢山住んでいる里に暮らしていました。
この言霊と呼ばれる力が非常に強力であり、相手に命じた内容を、相手にさせることができる非常に強力な力となります。
この里の言霊使い達は、ずっと里で過ごす掟があるのですが、
言霊使いは発した言葉で力を発する事を恐れ、あまりコミュニケーションをとらず、
あこがれのコミュニケーションや、感情表現、また外の世界の文化に憧れ、外の世界に飛び出します。
ですがあまり計画的でなかった誠は4日程歩き続け野たれ死にそうになったところ、ヒロインの一人である織部こころに拾われます。

誠は彼女達と過ごす折、あずきやこころに心配をかけまいとするため、
またこころに性的な意味で手を出したりしないため、こころの兄、あずきの息子となる言霊を二人にかけることになります。
ですがこころの親友である水無月ほたるにだけは言霊が通じず、彼女にだけは自分の事を説明した結果、ほたるは好奇心から誠に協力することになりました。
そんな訳で誠は学園にも通う事になるのですが、家族の心地よさとこころに対する欲求の間で板挟みになってしまいます。
そんなとき、あずきが残り僅かな命しかないと知り、誠はあることを決意するのですが・・・。

まぁストーリーばかりなぞってもあれなのですが、この章は最初にしてこれ単独だけで話が成立するんじゃないかと思う位、起承転結がはっきりしています。
この章のヒロイン、織部こころはこのゲーム唯一特殊な能力を持たないのヒロインなのですが、やや天然で仕草がいちいち可愛く、癒し要員となっています。
端的に言ってとてもいい子なんですが、意外と身体は発育しており、そのギャップが魅力ともいえるでしょう。
でも誠が兄となった途端、彼と結ばれたいという想いが芽生え、近親相姦に燃えるちょっと危ない子でもあります。
この子に関しては可愛い、エロい、超可愛いというスタッフのコメントがすべてを物語ってるような気がしないでもありません。
でもだからといってお馬鹿かというとそうでもなく、こころを心配させまいとあずきの不調を隠す誠やあずきに対し、気付かないふりをしようとする面もあります。
いちゃいちゃ編では誠の幼馴染である恋塚愛が姉になるため、彼女との心温まるやりとりも注目です。

ではここで主人公、織部誠についてです。
このこころ編だけではないですが、この作品は彼が少しずつ変わっていく、成長していくところも楽しみの一つです。
彼は元々外の世界にあこがれており、コミュニケーションや喜怒哀楽を少しずつ身につけていく訳ですが、
外の世界の常識や倫理には非常に疎く、自分が良かれと思えば簡単に言霊を使用し、出来ない事などないとすら思っています。
まぁこれは誠に限らず言霊使い全体がそういう傾向にあるのですが、彼はこころやあずきといった家族との触れ合いや、
ほたるや響子といった友人達と過ごす中で、少しずつ感情を覚えていきます。
そして言霊が聞かない水無月ほたるから、彼の危うさを指摘され、彼女と「みんなの幸せを守ってあげて」「自分を守ってあげて」という約束をします。
この約束における「みんな」は誠にとって良いと思えないような人間まで含まれるため、安易に言霊を使う事を少しずつ躊躇していくようになっていきます。
この変化はこの作品における見どころの一つといっていいでしょう。
ただ彼の性の価値観から、割とあっさり女性を抱く傾向にあります。
結ばれるヒロイン以外が抱かれる事に抵抗がある人は彼が気に入らないかもしれません。

朝比奈響子 編

第2話となる朝比奈響子編です。
彼女はネガティブでコミュ障であり、友達ができず、転校してきた誠と友達になる事になります。
ただそれも彼女が持つ霊感能力、霊らしき存在が常に見える事から起こった性格になります。

彼女はかつて友人である鈴夏を幼い時に失いました。それも自分が溺れるところを助けてもらった形となります。
そのために響子は鈴夏ではなく、自分が死ぬべきだったと考えていたのですが、
ある日、誠の言霊と共鳴したのか、響子は鈴夏の霊らしきものを呼び出し、ともに響子の近くで過ごすことになります。
最初は感情らしきものを持たなかった鈴夏ですが徐徐に感情が芽生えていきます。
ですが本来彼女の弟であった誠の友人、光一と、響子が話す鈴夏像に差がある事を認識していきます。
そして二人は感づきます。この鈴夏は本来の鈴夏ではなく、響子自身が思い描いていた鈴夏が産み出されたのではないかと。
さらにその鈴夏は響子の命を吸っていることを認識し、響子か鈴花の片方が生きることはできない事を知ってしまいます。
ですが響子は自分ではなく、鈴夏を生かす事を決意することになってしまいます。

この響子編はこころ編で自分を犠牲にしてあずきを救った誠が、
今度は逆に響子が自身を犠牲にして鈴夏を救おうとした彼女を近くで見、葛藤する点がポイントかなと思います。
とどのつまり誠はこの響子編で、あとに残された人の悲しみ、苦しみを自分で知る訳です。
また鈴夏の存在自体が、最終話となる水無月ほたる編の伏線にもなっています。
全体的に伏線の章という印象は少し拭えないでしょうか。

響子は他のヒロインに比べ、どうしても誠に与えた印象は少ないというのが個人的な印象です。
こころやあずきは家族を誠に教え、ほたるは人間を教え、また誠自身を守る事を教え、愛は過去の誠を知る役割としての印象が強いです。
それら誠を構成する主要となるものと比べるとどうしても響子の役割は小さいものかなと感じてしまいます。
後、同じ家に住んでいないのも大きいでしょうか。この響子編では誠が物理的に響子と離れる事が出来なくなったお陰で、
響子も織部家に住むような形にはなりますが、これは響子との触れ合いを少しでも増やすための設定でしょう。
そこはあまり気にするようなところではないかなと思います。

恋塚愛 編

第3話となる恋塚愛編です。
彼女は誠の幼馴染にして許嫁であり、誠を遙かに超える力を持つ言霊使いです。
誠が里を離れたため、彼を探しに誠の住む町に現れ、織部家にて誠の妹、こころの姉としての立場を言霊で手に入れる事になります。
彼女の主な出番は響子編からですが、実際にはこころ編のいちゃいちゃパートから存在感を増していきます。
第一印象はちょっとSな印象を持ちましたが、意外にも他の人間とも普通に過ごしていきます。もちろん実際のところは興味がないという面が強いのでしょうが。

そんな彼女は妹となったこころや、友人となった響子、そして外の世界の文化に触れ、少しずつ外の世界にも順応してきたかのように誠は認識します。
ですが彼女は誠とは異なり、仮に外の世界の友人達を事故か何かで全て失っても惜しいとは思っても後悔はしないと言います。
あくまでこの世界において自分たちは異端であり、この町にはとどまるべきではない、里に戻るべきだと誠に訴えます。
勿論誠もその事は少なからず意識していますが、それでも自分はまだこの町に居たい、里には戻らないと主張します。
当然、愛は言霊で無理やり誠を里に戻す事も可能な訳ですが、誠に嫌われたくないのと無理強いはしたくないという事でその手段には訴えないのですが。
誠がこころを抱いたことを知ってから、誠が、自分以外の人間を認識できない言霊をかけ、常に雪が降る愛の世界に認識を変えられてしまいます。
そして愛は彼女が納得できるような答えを誠が出さない限り、この世界を解除しないと言います。
ですがその言霊は愛を持ってしても強力過ぎるものであり、徐々に愛の命にもかかわる事態となっていきます。

愛は誠と同じ言霊使いとして、誠が里の外に順応し過ぎる事を危惧しています。
それにより誠が傷つくことを恐れています。もっともそれはこころ編でほたるに指摘された事でもありますが。
ですが彼女が行動を開始したのがこころを抱いたことを知ってからということを考えれば、単純にその行動は嫉妬から来るものという面が強いのでしょう。
もっとも誠も彼女に甘え過ぎていたという認識を持つにいたります。
実際に誠は里での掟により、愛に連れ戻されてもまったく文句が言えない立場ではある訳です。
とはいえ愛は愛で、かつて双子の姉であり、本来の誠の許嫁である希を自分の軽はずみな行動で失ったという後悔があり、
その事から誠に対し贖罪をしている、正確にはその事に依存しているといった展開が見えてきます。
それを考えるとこの愛編は誠が成長する面は薄く、愛が変わるエピソードともとれるでしょう。
実際にこの愛編のあとは、愛は他人に対する感謝を覚え、誠ばかりに依存する面は減っていきます。

水無月ほたる 編

最終話にしてメインルートとなる水無月ほたる編です。
すべての分岐を蹴り、最後に待ち受ける話なだけあり、ほかのヒロインとは一線を画しています。
彼女のみいちゃいちゃルートはなく、その分本筋ルートのボリュームが他の倍以上存在し、またエンディングも2つ存在します。

ほたるはこころの親友であり、その過程で誠とも交友ができる訳ですが、
彼女の立ち位置は誠が憧れていた外の世界のコミュニケーション、人間の感情、その危険性を誠に丁寧に教えるのが前3編での役割となっています。
普段は奔放な性格ですが、ヒロインの中でも最も頭の回転が早く、洞察力、人間観察力に優れており、誠のよき相談者となる、誠にとって欠かせない存在の一人となります。
彼女がいなければ誠は人としていろんなものを踏み外す事になってしまうであろう事は、作中で度々描写される誠の危うさから容易に推測が成り立ちます。

さてそんな訳で彼女は飄々とし、結構冷静なイメージが強いのですが、誠が彼女の事を好きと言った途端、慌てふためきます。
どうも彼女は自分の恋愛事には弱いらしく、また普段の彼女を知らない誠は、普段の彼女にも触れ、ますます彼女への愛情を強める事になっていきます。
彼女は時折意味深な言動を行い、プレイヤーの視点からは彼女は1週間ごとに記憶がリセットされているのではないかという疑いが強くなっていきます。
そして無事にほたると恋人となった週の最後の日、彼女はかつての鈴夏のように、誠の前から消えてしまいます。
ただ同時に彼女は自分を産み出した人間と会う事になり、その人間の言う甘言に惑わされないようにと最後に誠に忠告します。
そしてその直後、誠に消えたばかりのほたるからの電話が流れ、ほたるを産み出した人間、本当の水無月ほたると出会う事になります。
それこそが本来の水無月ほたるであり、今まで誠が会ってきた水無月ほたるは本来のほたるから産み出されたコピーであり、1週間の命しかない事を知ります。
そして本来の水無月ほたるは死に際であり、もう長くない事も知り、オリジナルほたるは誠に言霊で自分を救う事を求めます。

ラストなのでストーリー自体はこれ以上は割愛しますが、ほたるは今までのヒロイン以上の複雑性を持った人間として描かれています。
普段は友好的であり人を食ったような言動をしており、コミュ力も高い中、誠に対しては彼の相談、危うさに対して誠実な言葉を返し、だが裏では黒い感情も持っているような描写となっています。
そんな彼女の真意はどこにあるのか、本当は何を考えているのか、それはアマツツミの楽しみの一つと思われます。
そしてそんな彼女に、彼の憧れた人間を教えて貰った誠が最後にとる行動はどうなるか、それはラストの2つの終わりにてまったく違うものとして描かれます。
どちらの終わり方が正しいとか間違ってるとかはあまり議論する事には意味がないと思いますが、話としてはオリジナルのほたるに向き合った側を評価するべきなのかもしれません。
ですがほたるに魂があることを証明した1つ目の分岐も、無視できるものではないと思います。
そして1つ目の分岐はあずきを助けた時とは異なり、ほたるのためではなく、あくまで自分の幸せのためにやっているところがポイントかなと思います。
誠にとってほたるが居ない人生はもう既に想像すらできず、ほたるが幸せに生きるためであれば、その直後のほたるの悲しみすらも受け入れたのかもしれないと思います。
逆にほたるはほたるで自分の幸せを1週間で謳歌すると同時に誠の幸せも願っていました。
そして2つ目の分岐、産み出されたほたるを木偶人形呼ばわりするオリジナルほたるに対し、誠は生まれて初めて強い怒りを抱きました。
そんな誠にとってオリジナルほたるがほたるである事など、到底受け入れられる事ではなかったのでしょう。
ですがほたるは善意も悪意も持っている人間であり、オリジナルほたるとふとした事から接するに連れ、彼女もまたほたるである事を知ります。
だからこそ誠は二人のほたるを引き合わせ、最善の解決法を二人でなら示せると考え、そしてハッピーエンドへと繋がっていきます。
やはり人間のコミュニケーションを少しずつ誠が学んできた事を考えれば、自分一人で結論を出した最初の分岐よりも、こちらが本命なのでしょう。

何はともあれほたるは私にとっては久々にヒットなキャラでした。
頭が良い設定だけのキャラは数あれどそれを最大限活かし、聡明であり、主人公が成長する大きな支えとなる彼女は文句なしに今作のメインヒロインといえるでしょう。




今回のエピソード評価は以下です。
キャラ評価も似たようなものです。

ほたる>>こころ>愛>響子

やっぱほたるんが最高ですね。
強いて言えば全体的にもう少しボリュームがあれば尚良かったと思います。