Home 戻る


水葬銀貨のイストリア プレイ感想

今回はウグイスカグラさんのゲーム。
過去を乗り越える、成長物語。
熱く激しい、競争物語。
どこまでも深い、家族物語。
という3つのコンセプトを元に繰り広げられる物語(公式サイトより)

個人的な感触としてはシナリオとしては悪くないし、キャラも個性的で飽きない構成だったと思います。
日常でだらだら続くでもなくメリハリのある展開だったとは思うのですが、
一部の過去回想ラッシュはちょっとしんどかった気もします。

それと基本的に鬱な話が多いです。
主人公だけでなくプレイヤーの心を抉るような不快でえぐいシナリオになっています。
なんか悪い紹介みたいになっていますが、これ褒め言葉。

そしてこれは悪い点ですが、誤字が非常に多い。
また2回程キャラが分身したり、そして結構な頻度で音声バグが発生したりしています。
修正パッチは当てた筈ですが、全然です。この点はどうにかして欲しいですね、感情移入の邪魔です。
まぁ結論から言うと惜しいゲームなような、心にジーンときたシーンがそこまでないという意味ではまだまだな気もする、そんな作品です。
心をグサグサするという意味では何度もありましたが。

そしてやたら伏線を溜めるゲームであるため、そういうのを推測できずにイライラする人には向かないですかね。
主人公やヒロインがどんな思いでこんなセリフを言っているのかといった事を推察しながらプレイする私みたいな人種には結構楽しめると思います。

この先ネタバレ注意!
















共通ルート

あまりキャラ一人一人を語っても仕方ないゲームな気がするので、共通、個別、終盤の3パターンで今回は感想とか。

共通はかなり力を込めて作ってるなと認識しました。
EP3までは体験版範囲になりますが、CAの正体については誤字さえなければ結構評価できたのかなと思いました。
やっぱり誤字があるせいでいろいろ惜しいゲームになっちゃったりするんですよね。

主なキャラとして主人公の英士、幼馴染の小夜、妹の夕桜、後輩のゆるぎ、突如英士の家で住む事になった玖々里の4人が一応ヒロインとなります。
これだけ書くとメジャーな感じがしますが、実際はかなり関係性は複雑です。
共通ルートでは英士は全編通して小夜を救うために動いています。
だがその方法は紅葉というどちらかと言えば外道に位置する存在の協力を借りているせいで、極めて長い長い道のりとなっています。
プレイ中、どうして小夜ばかりがそこまで優遇されるのかがなかなか分からないため、やきもきする部分は正直あると思います。
また妹の夕桜も普段はあっぱらぱーな性格なんですが、実際は結構英士には辛辣で、主人公から一歩引いた接し方をしています。
あまり主人公にべとべとしない妹ってのは割と新鮮でした。

ですが突如紅葉の都合で潜り込んできた玖々里やヒーロー志望のゆるぎと付き合う事になり、英士の周りの空気が変わります。
特に玖々里は英士にとって重要や立ち位置となっていき、ある意味で英士が最も本音で接する事の出来る存在となっていきます。
玖々里も嘘吐きの英士を嘘だと分かっていても信じ続ける立ち位置となります。
ゆるぎはもっと純粋に英士をヒーローとして尊敬するようになります。
ですがそれは英士を表す単語としてあまり適切でないように作中では思えたため、どうしてもずれている感じがしてしまいます。

そんなずれたゆるぎちゃんよりも、ある意味英士にとって重要な存在なのが紅葉の秘書の灯。
彼女はかつて英士、小夜、夕桜を監禁した英士と小夜の父親、茅ヶ崎征士から英士達を救った存在でした。
この屑親父の監禁生活が特に酷いものとして描写されており、監禁されてから2年も経過してからではあったのですが、
それでも英士達にとっては救いのヒーローだったのでしょう。過去編はCGが全然ないのが悔やまれますが。
だからこそEP6のラストのえぐさが極まります。
灯はもうヒーローの志を折り、紅葉の下僕でしかないのでした。

そして英士の飼い主の紅葉と前の飼い主の紫子。
紫子はともかく紅葉は最後まであまり好きになれなかったのでとりあえずこの辺は飛ばします。

物語は進み、玖々里が人魚姫と呼ばれる、涙を流せる存在である事が判明。
その涙は治癒の力があるけど、涙を流す度に寿命を減らすのが人魚姫と呼ばれる存在。
そもそも物語の舞台となるアメマドイと呼ばれる島では人々は涙を流す事が出来ず、涙を流せる存在が特別となっています。
そんな玖々里の存在が本来の飼い主である紫子にばれ、また茅ヶ崎征士が小夜を再度誘拐しようと悪役側が動き出します。
ですが紅葉は玖々里が人魚姫なら紫子の元に戻すという契約を元々結んでおり、再度玖々里を見捨てざるを得ない状況となってしまいます。
だがそれよりも前に、夕桜が自分が人魚姫である事を紅葉に明かし、玖々里の代わりに自分を連れて行けという交渉をしていました。
どちらか一人を紫子と征士に差し出さなければならなくなり、征士はそれを英士に選ばせるよう状況を絞ってしまいます。
そしてこの最低の選択肢をプレイヤーに選ばされます。
どうせ両方選ぶしかないとは分かっていますが、基本感情移入する私には嫌な選択肢でした。


個別ルート

夕桜を見捨てると、小夜と玖々里のルート。玖々里を見捨てると、夕桜とゆるぎのルートに入ります。
正直個別ルートに関しては恋愛パートのための分岐として表現していいと思います。
しかし既に一人見捨ててる状態で話が進むため、とてもじゃないですが心が躍りません。
まぁこれこそ凡人が選べるささやかな幸せの話なのでしょう。
しばらく進めると二人の中で更に一人に絞り告白したりHしたりな話になりますが、そこからは所詮はEP1分なのでまぁHしたい人向けってところなのでしょう。
重要な話は全部個別ルートクリア後の終盤に集中するため、正直この辺はオマケでしかありません。

強いて言うならば、個別ルートでは小夜が好きな祈吏が割と頻繁に出てきます。
決して悪い娘ではないのですが、どうにも彼女の存在は一般視点から見た憎悪という安いものに思えてしまいます。
英士はじめ周りの人間がどれだけ壮絶な人生を送ってきたかプレイヤーは知っているので尚更そう思います。
とはいえ彼女は元々英士を慕っていた事もあり、彼女なりの結論を得て和解するのですがね。
英士以外では彼女とちゃんと向き合ったのは夕桜だけだったと思います。
元々大した接点のない玖々里とゆるぎはともかく、小夜があまり向き合っていないのはどうなのだろうか。
まぁ小夜は英士が一番救おうとしている分、一番真相を知らされないキャラなんで仕方ない面はあるのですが。
と終盤のあそこまでは思っていたんですが。


終盤ルート(Trueルート)

見捨てるルートを見終えるとようやく二人を見捨てない選択肢が出てきます。
流石に終盤のストーリーは今後プレイする人のために省きますが、小夜がわざと壊れやすいキャラを演じていた事が判明してしまいます。
ある意味ここでヒロインとしては一番問題あるキャラになったとも言えますが。
英士や夕桜のしてきた事は何だったのだろうという感じです。結局隠れて進める関係は長続きしないって事なのでしょうね。
正直小夜の存在こそ英士の幸せを阻む不幸なのではないのでしょうかと作中でも突っ込まれてた気がします。
ただどちらかというと英士は小夜がどうこうというより、育ての父親で小夜の父親である宗名への罪滅ぼしの想いが強かったのかなと終盤を見て思います。
小夜の行動は人間的な意味では理解できるのですが、どうしてもここまで頑張ってきた英士の方に感情移入してしまいますね。

そしてヒーローを目指すゆるぎ、偽善ヒーローの灯、偽悪の紫子。
灯は普段は有能なんですが、肝心なところで心が折れる困ったキャラです。どれだけ能力高くてもメンタルが脆いといいますか。
彼女はどれだけ他人を救っても所詮は自己満足に達してしまうのですが、ゆるぎは本物じゃなくても人を救う事は出来ると宣言します。
結局のところ、本物だから人を救える訳ではない、偽物だから人を救えない訳ではない。そんな事は問題ではない。
ゆるぎも灯も涙を流せない人間ではありますが、涙を流せた玖々里や夕桜が物事を良い方向に持っていったかと言うと答えはノーです。
彼女達は自分を生贄に他人を救える人間ではありますが、それが必ずしもプラスの方向に働くとは限りません。

そして偽悪の紫子。悪になり切れなかった少女。
かつては玖々里同様、人魚姫を産み出すための実験体でしかなく、先に泣けてしまった妹の紫乃を死なせてしまい、
彼女の願いである「生きて」という願いを愚直に続けてきました。
紫子と紫乃の姉妹は所謂物語の中で必ずといっていい程発生する救われない存在です。
ヒロインと定義された存在は少なからず救いが発生しますが、定義されない存在には救われない存在は珍しくありません。 だからこそ彼女は周りの幸福な人間を呪って生きてきました。
ですが結局自分のために生きようとしても、自分の手では一人も殺す事ができませんでした。
英士が泣けたのは彼女のためです。個別では玖々里や夕桜を見捨てても泣けなかった英士は、何故彼女のために泣けたのでしょう。
紫子が彼女達より大事だったか?ぶっちゃけそれはあり得ないでしょう。
おそらくは英士が自分を小さく見なかったから泣けたのではないかと思います。
そもそも玖々里や夕桜を見捨てた後の後悔、慟哭は自分のためです。見捨てた人間のためでも何でもありません。
過去の罪、小夜を救うという罪悪から解放された英士は自分を小さく見ないでいる事が出来たから、誰も救わない紫子を救う事が出来たのだと思います。
ただ紫子については伏線が弱かった感があるので、その辺が残念です。共通ルートだと悪党のそれですしね。

そして茅ヶ崎征士。紫子と違ってこいつは徹底語尾最後まで糞外道でした。
仮にも父親なのに、英士や夕桜が殺す事に何の躊躇も持たれていない辺り、どれだけ憎悪されてるかが分かるというものです。
まぁ仮にも同じ境遇の筈の小夜は恐怖が勝ってしまってあれなんですが。
そして征士が小夜にこだわる理由は如何にもこの男らしい理由でした。
EP6やEP8では憎くて仕方なかったんですが、最後に息子と娘に撲殺されて、
何故殺されようとしてるのかも分かっておらず、無様に命乞いをするこの男には憐れみさえ感じました。
なんで今ではそれ程憎くもないです。寧ろ最も相応しい無様な最期を見せてくれて感無量です。
ていうか夕桜は深追いし過ぎて捕まるパターンかと思ったら普通に夕桜の読み勝ちで撲殺コースに入ってくれてスッキリしました。夕桜はこういうところ凄い好きです。
個別ルートとはいえ、玖々里は深追いして捕まったんでいい対比ですね。玖々里が基本お人好しである事を表してもいますが。
運動嫌いなのに素振りを続けた苦労が報われたのは良かったと思います。
まぁ止めは英士にとられてしまいますが、その辺はまぁ仕方ない。
しかし小夜は本当に最期まで蚊帳の外だなぁ。

でまぁラストの紅葉についても語らないといけないのかもしれませんが。
正直やってきた事が外道過ぎてどう語ればいいのか分かりません。紅葉にはどういう結末なら良かったでしょうか。
まぁあれだけ好き勝手やってきても嫌いにはなれないキャラだったんである意味凄いです。

で、エンディングですが、正直軽く流し過ぎじゃないでしょうか。
ようやく掴んだハッピーエンドなので英士と灯の語りだけで終わらせないでちゃんとヒロインのその後をヒロイン本人達が語ってほしかったです。
このライターはハッピーエンドを書くのが苦手なだけな気がしてきました。






まぁそんな訳でいつも通り脈絡なしに語りましたが、大体その時思った事を書いている感じです。
いつもそんなんですけどね。
ちなみにお気に入りは夕桜で次点で灯、その後にゆるぎ、玖々里といった感じです。小夜は下手なサブより下です。
灯ルートが欲しい、というかトゥルーエンド後で恋愛がしたいです。
もうシリアスストーリーとか要らないんで何不自由なくいちゃいちゃ出来る的な。
・・・このライターには無理か。