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できない私が、くり返す。 プレイ感想

今回はあかべぇそふとさんのゲーム。
過去をやり直したい、過去を後悔しているという全ての人へ向けるというコンセプトのゲーム。

結論から言うとやりたい事、話の根幹的な意味は理解できますが、どうしても訴えるには弱い感じです。
この作品は主人公が時間を巻き戻す時計を所有しており、それにより何度でも時間を巻き戻す事が出来ます。
加えて回数、いつまで戻せるかといった制限はなし。より正確には前の所有者から受け取った時間までにはなりますが、まぁ無制限みたいなものです。
ですがこの時計で巻き戻しても確定した未来は変えられないという代物であり、あくまで長い時間を過ごしたい人、考えたい人ようのものと言えます。
この確定した未来ってのが最期まで微妙なラインでしたが、この話の本質はそんなタイムリープの設定がどうだのというところにはありません。
大抵この手の作品をやるとすぐに中二心が発生して、時計の設定がどうのだの、緻密な設定がどうのだの、という話をする人がいますが、そういう人は今作の話の本質を掴めていません。
それは設定の不整合を語りたいだけであり、物語やヒロインとの関わりを通して何を感じたかという事を何も語っていません。俗に言うウィキペディアで設定だけ眺めました的な人です。
要するに時計の設定とか、なんで時計が出来たとか、そんな話はどうでもいいんです。
あるルートで時計の前の前の所有者の話が出ましたが、それがストーリーに何ら関わってこないのがこの物語の本質がそんなところにない事を示しています。

それらのコンセプトを踏まえた上で言います。
死した人間の生き様を、辛い過去を乗り越えるという訴えとしてまだまだ弱かったなと。
とりあえず共通の話はメインルートで語るので今回はサブルート、メインルートという区分けで感想を述べたいと思います。

この先ネタバレ注意!
















メインルート以外(サブルート)

サブルートはメインヒロインが死んだ後に派生します。
メインヒロインの詩乃は癌で亡くなりますが、ちょっと悲しい気分になる程度で特にサブルートに影響を与えたりはしません。
まぁ言ってしまえば主人公の陸と詩乃は2ヶ月ちょっと、少し付き合いがあった程度の関係です。それ程違和感のある行為とは思えませんでした。
・・・まぁだからこそこれらサブルートはオマケのにおいが強いのですが。

未喜ルートは、未喜を養う事に一生をかけた兄の篤史が、自分の幸せに目を向ける話です。
この兄妹は両親が離婚して出て行ったために、歳の離れた篤史が未喜を育ててきました。
篤史は当然、未喜を溺愛しておりその逆もそうですが、それゆえに自分が好きで相手も好きな女性と付き合える時でさえ、未喜を優先し、篤史自身の幸せをとりませんでした。
それを何とかして篤史自身、未喜と無関係に自身の幸せに向けた方向へ進むというお話です。
ぶっちゃけ篤史への感情移入の方が強く、ヒロインである未喜本人とはその話が終わった後にとりあえず結ばれました、程度の感覚です。
このルートのメインは篤史だったと言えるでしょう。人間一人を育てる事がどれだけ大変かは私の歳だからこそ分かる事であり、未喜に感情移入するのは難しかったです。

藍里ルートは普段の日常会話が藍里の電波会話だけなので正直きつかったです。
話としては、バトミントンでライバルの娘と戦う事で、自分の限界を悟る、的な話かな。
藍里に興味がないんであんまり語る事がないです。(無慈悲)

ゆめルートは藍里ルート以上に語りたくないです。
ゆめ本人は可愛いし、ゆめの祖父がかつて時計を所有していたという話が出てきたけど、ストーリーには一切関わりません。
ゆめが時計の事を知ったという事もその後のストーリーに何の影響も及ぼさず突如出てきたゆめの親友のクレイジーサイコレズが滅茶苦茶やらかすだけの話です。
このレズ女が非常にうざかったので完全に覚めてたルートです。
ていうか自分の欲望のままに犯罪行為も好き勝手やったのに、どうせ陸とゆめはなぁなぁで許してしまうのが目に見えてて、プレイ中の予想通り犯罪行為という事には触れもせず終了しました。


メインルート

今作のメインヒロインである詩乃。
彼女はいわゆる癌で、共通で病状が進んで死亡します。
詩乃ルートでも死亡するのですが、彼女が口にした願い事を叶えるために陸は時間を巻き戻し、詩乃の願いを叶えていきます。
そしてその中に恋愛をしたいというものがあり、彼女と結ばれる訳ですが、最終的に陸が過去に好きな女である蓮と重ねていた事がばれ、詩乃死亡後も陸にとってそれが後悔となってしまいます。
蓮に時計を貰った時間まで巻き戻り、何度も巻き戻して医者となって詩乃の癌を治すというのが陸の手でしたが、蓮はまた違う病気になるだけと頑固拒否します。
そして蓮は、幼い少女である奈月をかつて何度も巻き戻して死の運命から救おうとしましたが、そのたびに自分の救うという自己満足で奈月を死なせ、蓮自身の心も死んでいき、諦観に満ちてしまいました。
蓮は自分と同じ目に合わせたくないと、奈月の頑張る姿を見せて陸の考えを改めさせました。
そして再度5年後、陸は詩乃と出会い、自分が後悔せず、詩乃も後悔しない時間を作るため、再び詩乃と付き合うのです。
今度は最期まで拒否されず、逆に詩乃の手を握ったまま詩乃は亡くなりますが、詩乃は最期まで大好きと陸に伝えるのでした。

要するにメインヒロインである詩乃はどのみち死亡します。しかし話の流れからしてこの結末は致し方ないでしょう。
やりたい事は十分理解できるし、それなりの説得力があります。陸は何度も5年を巻き戻そうとしていましたが、現実を蓮に見せ付けられ受け入れるというのは流れとしてはおかしくありません。
まぁ当然カタルシスはないためハッピーエンド主義者にはきついでしょうが、私は流れとしては悪くないとは思っています。
とはいえやはり弱いなと思う部分があるのです。

まぁぶっちゃけてしまえばそこまで詩乃に惚れ込んだのは何故か?かつて惚れた蓮の記憶がおぼろげになる程の存在だったのか、という点です。
まぁこれは言ってみれば人それぞれなんで私がそう感じただけかもしれませんがね。単に蓮と共通点を見出した陸がそう思ったと言ってしまえばそうなのでしょう。
後は正直それだけの話だよね、というのは大きいです。願いを叶える過程も特に面白い訳でもないし、退屈な点は否めないです。
後は運命を変えられないという基準が曖昧なのは否定できませんね。結末は変わらず過程は変わると作中では言われていましたが、結局どこが結末かなんて人によって異なるものです。
その辺は人の死は変わらないという絶対的結末によってぼかされた感じはします。

まぁ後はヒロインが普通過ぎて個人的にはつまらないですね。もう少し面白みが欲しいです。特別いい子って訳でもないですし。人間臭いとも言えるけど藍里とかはエロゲによくいる変な事話すだけの変なだけの人だし。
総括すると微妙作です。サブルートが個人的評価を更に下げているので・・・