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39話 エピローグ-U
「で、出たよー!
適合率100%だー!!」
セイレンさんが万歳する。
七罪魔結界の機能の一部として、周りに存在していた魔法陣。
それらは既に白い光を灯し、”こちら”の制御下に入った。
……たぶん、だが。
「これでどこまで効果があるのか。」
「どうかしらね。
でもまぁこう達成しちゃうと割とあっけないもんね。」
まぁ見た目的な派手さはお世辞にもない。
この行動が人類の歴史に刻まれる事もないだろう。
刻まれるには少々地味過ぎる。
「ですがこれで終わりではありません。
元々の七罪魔結界の適合率も100%。
これで七罪魔の侵攻を止められるという保証はない訳ですから。」
「ま、そのあたりは後々の人が頑張るんじゃないの?
一応私も考えてはみるけど、私はお姉ちゃんの事もあるしね。」
まぁ確かに。
私達が後の世界とやらのために、そこまで尽力する義理はない。
結局のところこの行動は、私達にとってはかつての冒険の続きだったのだから。
「では私達も、一旦は解散という事でしょうか?」
「ですね。皆さんお疲れ様でした。」
「相変わらず淡泊だねー、古都さん。
でも技術者の私としてはこれで終わるつもりはないからねー!」
「この施設の宝箱もだいたい取りつくしたからな。
私はまた新たなダンジョンで冒険と宝を求めるとしよう。」
一時解散。
これでお別れという訳ではないが。
なんとなくだが、全員で集まる事ももうない気がしていた。
「あら。案外寂しがってたりするの?」
「いいえ、まったく。」
「ふーん。まぁいいわ。
じゃまた縁があればね。」
エキドナさんも軽くそう言って、施設を後にした。
この程度のあっさり加減が私達には相応しいのかもしれない。
「………」
この結界がいわゆる”あちら”側との道になっていたのであれば。
私達の行動によってその道は完全に閉ざされてしまったという事だろうか。
だとしても、そう。
「ま、なるようになるでしょう。
私達は元来そういう関係だったんですから。」
私も施設を後にする。
この機構の維持を、国の正式業務とするよう整備したりとまだまだ後作業も残っている。
ただ、ひとまずは。
「……疲れましたね。
ほんと慣れない事はするもんじゃないです。」
それもまた、本音である。
そうしてこの施設から気配が消えて数時間。
かつて”あちら”側であった側から、二人の気配が現れる。
それは……
「……あーあ。また此処に戻って来ちゃったじゃん。
結局美味しいところは持ってかれたって感じだねぇ。」
「まぁそれも仕方ありませんね。
僕たちは脱落した身です。」
闇月と希殺。
大量出現した七罪魔もどきと戦っていた彼等は、この場所に戻って来た。
「この機械が原因な気もするんだけどねぇ。
いっそのこと壊しちゃう?」
私は冗談交じりに言う。
「まぁさすがにそれは辞めておきましょう。
どのみちもう決着はついてしまったでしょうし。」
あくまで冗談だが。
私とてそれ位の空気は読む。
とはいえ不満が大きいのも確か。
「私達はなんで最後まで行けなかったと思う?」
「はは、闇月さんはもう分かっておられるのでは?」
「まぁねぇ。」
現実主義が過ぎたこと。
つまるところあの世界にすぐに適応できなかったのが敗因。
否、できなかったというには語弊がある。
できなかったのではなく、やりたくなかった。
そういう一面があった事は否定できないのだから。
「神だの超越者だのを潰すために、
今までの自分が積み上げてきたものを壊す。
そこまでの覚悟がなかったって事なのかな?」
「それはどうでしょうかねぇ。
自分を壊さない事もまた覚悟と言えるでしょう。」
「哲学的だねぇ。
まぁどうでもいいんだけどぉ。」
まぁ終わった事にいつまでもこだわるタチではない。
不満はあるが、少し開放的な気分ではあるのだ。
まぁなんていうか……
「……なぁんか自分を圧迫してたものが消えた気分。
産まれた時からずぅっと感じていたんだぁ。
この世界はどこかの馬鹿によって、都合よく動かされてるって感じがねぇ。」
「おや、相変わらず闇月さんは面白い感性をしていますねぇ。
僕もそんな感性が欲しかったですよ。」
「冗談。
要らねぇよこんなもん。」
まぁ不快なものが消えたのなら、それはそれで良い。
こんなところにもう未練はない。
「もう少しこれからははっちゃけて生きてこうかなって思ってるんだぁ。
現実現実ばかり見てもつまらないしねぇ。」
「はは、僕もまだまだ頭でっかちが過ぎたようですね。
そういう意味では今回の件はいい勉強になりました。」
「じゃあねぇ。
二度とお前とは会わないよぉ。」
所詮、私は野良猫だ。
野良猫は野良猫らしくもっと気楽に生きてくさ。
ただこれからは、そう。
もっと開放的になってみるのも悪くない。
そう、思えた。
「フフ、そうですね。
魔物や悪魔に怯える時代は終わりを迎える。
ですが……」
それでも人々は英雄を求めるのだ。
自分達を救ってくれる存在を、どんな時代の人々も求めるのだから。
「僕のやる事は変わりません。
神殺しという英雄劇を見届ける事こそできませんでしたが。
この失敗を糧に僕は新たな英雄劇を紡ぐとしましょう。
さぁ今度は何から始めようかなぁ♪」
僕は輝ける未来に向かって、闇月さんとは逆の方向に足を進めた。
お互い求める未来は違くとも、人が紡ぐ絆は永遠なのだと。
僕は信じるとしましょう。
そして。
時代は次から次へと変わり、長い長い時は流れる。
ナイツや七罪魔の存在が本当の御伽噺になる程の時間が。
「今回の警備は十分だろうな。」
「は、警部!
今度こそ奴に遅れはとりません!」
「だが油断するな。
何しろ奴こそは……」
ばさぁっ
人々の上空にその光は現れる。
闇の中に輝く、月の光。
そう。
「で、出たぁぁぁぁぁぁ!!
闇猫怪盗、ラインだあぁぁぁぁぁぁっっ!?」
「にゃーっはははははははははっっ!!
伝説の宝石、月の雫はこのラインちゃんが貰い受けるぅっ!!」
「やらせるかぁ!撃て、撃てぇぇっ!!」
コートに身を包んだ人々が銃らしきものを放つ。
そう、銃らしきものだ。
そこから放たれたものは、盗賊トリモチと呼ばれる、まぁ当たったら動けなくなる類のものだった。
殺傷能力はない。
「はは、いいぞいいぞやれやれぇ!」
「ラインちゃん頑張ってー!」
「あ、そろそろ来るぜ!」
何故ならこれは喜劇。
いいや、もはやお茶の間の文字通り茶番劇か。
だがそんなお気楽さこそがこの時代に相応しい。
「そこまでです、闇猫怪盗ライン!」
「私達が来たからには、お前の好きにはさせないっ!」
黒と桃。
それぞれ異なる色の衣装に身を包んだ少女二人が現れる。
怪盗は彼女達を、ビルの屋上から足を出して挑発的に。
「おやぁ。落ち目の5代目じゃないかぁ♪
にゃっはははははは!少しはやれるようになったのかなぁ?」
「う、うるさいっ!
今度こそ私達が勝つんですっ!」
「さぁ、行きますよ先輩!」
正義を気取る少女達はビルに突入する。
怪盗は彼女達を迎え撃つ。
ぶっちゃけそんなもの待たずにさっさと退散してしまえば、何事もなく逃げられるのだが。
”そんな野暮な事はしない”
「さぁかかって来ぉい!
このラインちゃんが相手をしてやるぜぇ小娘どもぉっ!!」
だがそんな茶番劇の裏で動く、現実的な脅威もまた存在する。
「……今日こそ貴様らを地獄の底に返す。
英雄教団の残党共。」
「残党ではない。
我等はタケシ様の意思たる芽。
全ての芽が大木になり得る器。
器が実ったとき我等が求める英雄は誕生するのだ。」
「狂人どもがっ!
今日こそここで決着をつけてやるっ!」
どぉぉぉぉぉん!!
なんか盛り上がってるところで、間抜けな爆発音が響く。
そこに現れたのは複数の人影。
「お、お前らはまさか……っ!」
「ふふ、辛気臭いったらありゃしない。
さぁスーパーな私達、魔法少女兵団の餌食になりなさいっ!!」
急に現れた少女達の群れが、シリアスもどきの連中にぴろりろり〜な星をぶつける。
効果音はさておき、威力は絶大だった。
「ぐわああぁぁぁぁぁっっ!!」
「はい、英雄教団の残党と、正義警察の残党を確保っと。
やっぱり私達が一番スーパーよね!」
現実的な脅威はあっさり封殺された。
時代は大きく変わり。
かつての人々の活躍が、本当の伝説や御伽噺になろうとも。
その名残が完全に消える訳ではない。
「……例の雪女についての情報、ついに入りました。」
「あぁ。ようやく見つけたか。
私の初恋の少女を。」
「……公私混同じゃねぇか。」
たとえ後の時代の人々から忘れられようとも。
「……こ、これが。
こんなものが、人々の集団自殺の、真相……っっ!!」
「あの女こそが、負の極限。
それを体現した魔物……っ!?」
世界に残された神秘が、完全に消える訳ではない。
「……まさか、古代都市イムヌスの下に、こんな化物が……」
「我々はもしかしたら、パンドラの箱を開けてしまったのかもしれないな……」
それが、世界。
それが、物語。
とはいえ、くす、くす、くす。
”私達”が語る劇はもはやない。
眺める者もここまでだ。
さぁ。
第Vの物語を始めよう。
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