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2話 5年後の騎士達



序列制度。
5年前にグレイスさんがナイツ筆頭・零騎士に任命されてから、グレイスさんが導入したもの。
序列が高いものに多くの状況における優先権が与えられ、それがナイツの格にも繋がる。
それゆえ一部の例外(ロリショタ性癖のあいつ)を除き、ナイツは自身の序列を上げるため、切磋琢磨するようになった。
こんなものを導入した理由は一つしかない。
闘争の悪魔が自身の復活を宣言した備え。
それを直接聞いたのはグレイスさんと雨宮古都だけだが、あの悪魔なら確かに言いそうなことではある。

ちなみにこの私、桃騎士音羽は序列6位。
上の面子を考えれば妥当な評価といえる。
……いや、せめてあの変態は抜かしたいのだが、あいつはあんなんでも強いのだ。
私の身長がいまいち伸びないせいか、この歳になってもいまだにあいつは私を可愛がってくる。
あと少しで150cmなのだ、あと少しで…

「お疲れ様です!グレイスさん!」
「おう、シグナム。今日も精が出るな。」
訓練場で訓練に勤しんでいたナイツ序列8位・千騎士シグナムがグレイスさんに挨拶する。
彼は5年前に討伐隊の一員としてメイクとかいう吸血鬼と対峙していたらしい。
単独でナイトヴァンパイア級も仕留める等、実力も確かだがグレイスさんやユグドさんはその胆力を評価しているようだ。
実際、他の阿呆どもとは違い、かなりまともな人である。
「あーもう疲れたぁ。
 こんな長旅したらお肌がチリチリしちゃうしぃ。」
阿呆どもの一人、ナイツ序列10位・紫騎士チルッチル。
訓練場に着いた瞬間、不貞寝を開始するとかナイツの一角としての自覚がないのだろうか。
本名はチルッチル・ケロッケロとかいうらしい。もう名前からしてふざけている。ていうか絶対偽名だろ。
「チルッチル殿。先輩方の前でその態度はなんですか?」
「なぁにぃよぉ。あんたに文句言われる筋合いないんですけどー?」
ナイツ序列11位・黄騎士イエーロ。
如何にも真面目君といった感じの、平凡な見た目の男だ。
真面目なのはいいのだが、こいつはチルッチルとは別の意味で阿呆である。
「あんたなんて盾とか鎧とか壊しちゃったじゃん。
 さっすが序列最下位は違うわよねー♪」
「ち、違うっ!あの時は仕方なかったんだ!!」
確かに戦いにおいて武具が痛むことはあるが、毎回壊してるとなるとドジっ子の烙印を押されても仕方ない。
男のドジっ子とかきもい。
「まぁそう喧嘩するな、若いお二人さん。
 新人の前で情けないところを見せるべきじゃねぇぜ。」
「あ、青騎士殿……面目ございません……」
「はぁい♪さっすがはエクス様ぁ♪」
ナイツ序列5位・青騎士エクス。
この阿呆共を窘めるのは大体この人だ。
5年前までは自分を勇者エクス様とか言っていたあれな人ではあったがそれも過去の話。
今ではナイツの先輩として恥ずかしくない風格である。
…いやまぁ風格なら私も負けていないのだがムードメーカーまで兼任してるとなると見習うべき点が多いのも確か。
「まだ新人と決まった訳ではない。
 ……否、零騎士様に対しこのような失礼な態度。断じて私は認めん。」
ナイツ序列7位。橙騎士アカシャ。
連盟の一角、マルシェロ・レジスタンスの甥でもある。
よって貴族としての格自体は私より上だ。上なのだが…
「それはこれからテストして決めればいいことだ。
 そうだろう?」
「はっ!!零騎士グレイス様の仰る通りでありますっっ!!」
このホモオレンジはグレイスさんを前にすると態度が180度変わる。
序列が私の1つ下のせいで何度もこいつに序列入替戦を挑まれてる事もあり、私にとってはかなり鬱陶しい。
この場に集まったナイツ7名。
グレイスさんが一番前に立ち、私達は横に分かれて整列する。
ふてぶてしくもナイツの凱旋を横切った新人候補を除いて。
「さて早速だが、名前を聞いてもいいか?」
「……瑪瑙(めのう)。」
相変わらずボソボソ喋る小娘だ。
ナイツを志願するならもっとはっきり喋って欲しい。
「俺は零騎士グレイス。
 こいつらのリーダーをやらせてもらっている。
 瑪瑙は、その出で立ちからして東方出身か?」
「……はい。」
言われてみれば得物が双剣鬼が持っていた剣に似てる気がする。
刀って言うんだっけ?
「魔物討伐の経験は?」
「……鬼を沢山、あと八岐大蛇……」
やまたの?なんだって?
「此処には誰と来たんだ?」
「……黒鉄(くろがね)と……」
この瑪瑙とかいう小娘は、黒鉄とかいう男と二人で東方からやって来たらしい。
そんなやり取りがしばらく続く。
零騎士グレイスが面談してる以上、私達は事の成り行きを見守るほかない。
「成程なぁ……」
グレイスさんは何か考え込むように腕を組み、少しの間、沈黙する。

そして次の瞬間。

空気を切り裂くような一閃が小娘を襲った。
と思いきや……
「二刀流!?」
誰がそう叫んだか、小娘は腰に差していた二剣を正面に構え、その一閃を防いでいた。
流石にこの場の全員が驚嘆せざるを得ない。
いきなりこんな小娘に攻撃を仕掛けたグレイスさんもそうだが、それ以上に。
「ふ、防いだ!?
 零騎士グレイスの攻撃を、だとぉぉおお!?」
この国最強の騎士の一撃を防ぐ。
そんな事が出来る人間はナイツの中でもかなり絞られる。
その攻撃を仕掛けた張本人は既に剣を収めており、そして。
「よし、合格。
 お前をナイツ序列12位・黒騎士に任命する。
 黒騎士瑪瑙だ。
 正式な叙勲はまた後日な。」
ナイツへの加入を許可した。
「瑪瑙の教育係は序列6位・桃騎士音羽。
 お前に命じる。
 以上、解散。」
あっさり解散を宣言し、その場を後にした。
ていうか私?私がこいつの教育係?ちょっと待って。
「よろしく、お願い、します……音羽、先輩……」
うわ、いつの間にか目の前にいる。
とはいえ命じられた以上は任務をこなさなければならない。
「え、えぇ。
 私は音羽。桃騎士音羽です。
 それよりも貴方はナイツとして恥ずかしくない振舞いを……」
え、えぇと、教育係ってまず何しないといけないんだっけ?
ていうか私、教育係なんてした事なくないですか?
いや急に命じる方もどうかと思うのですが、あぁ、もう。

このなんとも扱いに困りそうな小娘。
ナイツに任命されたにもかかわらず、ボソボソ喋る根暗そうな小娘。
にもかかわらず、あの戦闘時の極端な佇まいは、なんていうか、そう。

あの忌々しい女を彷彿とさせた。


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