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11話 悪意が明かす真実
「千騎士奥義・千宣風巻風!!」
「青騎士奥義・五月雨ノ慈雨!!」
肉塊たちは何分割にもされ、一斉に蹴散らされる。
だがそれでも分割された肉塊たちが一か所に集まり騎士達に突進してきた。
「一か所に集まってくれるとやりやすい。
赤騎士奥義・炎々ノ砲火!!」
赤騎士アーカイドの剣から放たれた巨大な炎弾が肉塊たちを焼き尽くす。
肉塊たちは細切れどころか一瞬で燃え尽き灰となる。
「やれやれ。まだまだ沸いて来るな。」
赤騎士は面倒くさそうに言う。
「もう少し可愛げのある相手なら私も愉しいのだが。」
「ははっ。流石のアーカイドさんも、
あれ相手じゃ戦意も萎えるってもんか?」
「当たり前だ。
せめて姿形が少年少女であればまだやる気が出るんだが。」
「……その場合、赤騎士様は敵に抱きつきに行かれるのでは?」
「はっはっは。違いない。」
肉塊たちの掃討の主隊を任されたのは、
赤騎士アーカイド、青騎士エクス、千騎士シグナムの3名。
「しかし思った以上にやるじゃねぇか、シグナム。
これなら先代千騎士の後継として相応しい……
……あり?先代の千騎士って誰だっけか?」
「……青騎士様、御冗談を。
先代の千騎士様は………あれ?」
「何を二人してボケているんだ。
そんな事より肉塊どもはまだまだ沸いて来るぞ。」
「あ、あぁ。」
「……近接隊だけでは心もとないですね。
魔法使い隊をそろそろ。」
「あぁ。指揮を頼む。」
主隊は隊列を一切乱すことなく、肉塊たちを殲滅していく。
「……遊びの時間だと?
貴様は何者だ!?」
オレンジの人が首のなくなった、
いいや、その形容し難い何かに対して問い詰める。
だがそんな事、聞く必要ない。
「……黒滅刃っ!」
ボクは刀に力を込め、黒い刃を放つ。
その刃は、その黒は、その何かを飲み込んだ。
だが。
「ひどいじゃないか。
少しくらいは話を聞いてくれてもいいのにさ。」
「ひっ!?」
今度はボクの放った黒い刃が話し出す。
一体これは何……?
「……落ち着くんだ。
敵のペースに翻弄されるようになったら、おしまいだよ。」
叔父さんが落ち着いた声でボクを諭す。
「これはなかなか変わった相手だね。
それで、貴方はいったい何者なのかな?
この肉塊たちの親玉って事なのかい?」
叔父さんは落ち着いて話す。
「はぁ?
なんでこの僕がこんな廃棄物共の親玉なんてしないといけないんだ?
こいつらは盛り上がらせ用の玩具だよ、玩具。」
黒い刃が人型を取る。
……なんていうか犯人はまだ不明って感じの黒スーツのあれ。
「こいつらは既に廃棄された奴らさ。
もう要らなくなったらしいから、僕がリサイクルしてあげたってわけ。」
「……何のために?」
「何のため、だって?
さっき言っただろ。遊びのためだよ。
これだからモブってやつらはさぁ。」
「……ふざけた輩だ。
灰騎士、こんな輩の話を聞く必要などない。」
オレンジの人が攻撃しようとする。
……確かに聞くべきではないのかもしれない、けど。
「……どうして、お前はあんなことを。」
それでもボクには聞く以外なかった。
「どうして?どれの話だよ。」
「ど、どうして、村の人を……っ!?」
こんな奴らさえ現れなければ。
「あ?村?
知らないよ。
廃棄したのは僕じゃないんだからさ。」
「……下衆め。」
オレンジの人は黒い何かに向かって突撃する。
……いけない!
「……駄目、それは、だって……」
オレンジの人が黒い何かに剣で斬りつける。
だが斬った側の剣の先から黒く染まっていく。
「な、なんだこれはっ!?」
それはオレンジの人の剣を黒く染め、更には剣を掴んでいるオレンジの人の指先にまで……
ざしゅっ!
……及ぶ前に叔父さんの短剣がオレンジの人の剣を弾き飛ばした。
「は、灰騎士……?」
「あれは下手に攻撃しちゃいけない類のものみたいだ。
得体の知れないものに迂闊に触れてはいけない。」
そう。何故ならあの黒いものは、元々……
「元々、君の負力で生み出したものだ。
物理的な力では一切の影響を受けない。
まぁ結界破りは別だけどね。」
「……負力とは?
それが瑪瑙君、君の力なのかい?」
「……こ、この力は……」
この黒い何かはどこまで知っているのだろう?
「どこまで?
そりゃもちろん全てさ。
君の知らない事も含めて全て、ね。
そうだなぁ、たとえば……」
その黒いのっぺらぼうだった顔から、
不気味な口が現れ、嘲笑う。
「君は未踏の娘ではないということ、とかね♪」
「……え?」
ボクは言葉を失う。
「少しもおかしいとは思わなかったのかい?」
「お、おかしいって……?」
「未踏が君の父親だったとしたら、
何年も君のところに一度も戻って来ないで、
挙句イムヌスで行方不明になんてなるか?
だいたい母親は誰なんだい?
どうして君は父親しか思い”つかない”んだい?」
「……そ、それは……」
「……記憶の混濁。
それはまさか……」
叔父さんは何かに気づいたようだ。
「……どういう事だ?
先ほどから何の話を……」
オレンジの人は、まぁ、オレンジだった。
「そちらのモブはなかなか鋭いじゃないか。
そう、記憶収集装置だよ。
正確にはその劣化品だけどね。」
記憶収集装置……?
「あくまで本物はこの国の下にあるものだけだ。
東方にあるのはただの失敗作だよ。
”たまたま”君が住んでいた村がその実験に巻き込まれた、というだけの話さ。」
黒い人型はにやにや笑いながら愉しそうに話す。
理解が追い付かない。
……いいや、そうじゃない。
理解、したくない、だけだ。
ボクのそんな葛藤を余所に叔父さんはその黒いものと話を続ける。
「……記憶収集装置の失敗作。
では上層部もみんな情報を誤認していた、という事か?
いや、それは流石に……」
「流石にないんじゃない?
あの砂上楼閣がそんな間抜けとは思えないなぁ。
敢えて未踏の娘という情報を君たちには流したんじゃないの?
人間の策謀の事なんて僕には分からないけど。」
「……記憶収集装置は既にイムヌスの管理下にある。
その失敗作に都合よく踊らされる訳はない、か。
ありがとう。黒い人。
これで合点がいったよ。」
「お、おい、灰騎士!
敵と友好的に話してどうするっ!?」
「う〜ん、友好的なつもりはないんだけど……」
「だったらその小娘はなんだ!
あの黒い力は何なんだ!?」
「……こ、これは……父様に、あれ……?」
頭が混乱する。
その黒いものはニヤニヤ笑いながら話す。
「もちろん未踏なんて関係ない。
君は未踏と面識なんてないんだから。
面識があったとしたらそれはただ一人。」
……面識?
それは……
「……その辺りにして頂けませんかな。」
黒い鎧姿。
ボクが見慣れた姿。
黒鉄。
そして。
「……そんな奴の言うことを真に受けてまた落ち込むとか。
相変わらずナイツとしての自覚が足りませんね。
瑪瑙。」
相変らず無駄に偉そうな音羽先輩だった。
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