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30話 彼女達の軌跡(後編)



そうして1年後。
私は1年もかけずに連盟となった。
砂上楼閣が狙ったようにポストを上げてきた節はあるが。

エキドナさんは普通に悔しがっていたが、オーガストさんから魔導師部隊そのものは引き継いだらしい。
あの例の孤児院の娘たちもそこに所属し、少しずつ人員を増やしてるようだ。
1年でスーパーな魔導師部隊とはいかなかったようだが、数年後にはそれなりのものになってる気がしないでもない。

まぁそんな訳で。
今日びの私達は。


「……ブタよ。」
「ワ、ワンペアだよー。」
「……ストレート。」
「あらやるわね鈴蘭。
 けどこのスーパーなエキドナ様には及ばないわ。
 フルハウス!」
「………」
「これで今度こそ私の勝ちね。
 でしょうティーナ?」
「……いいえ。
 甘いですよ、エキドナさん。」
「げ!フォーカード!?」

わんやわんや。

「……く、妾の崇高なる組織。
 『紅に燃える神の崩落者(クレイジー・クリムゾン・デストラクション)』の構成員が、
 なんたる緊張感のなさじゃ。」
「そんな名前は覚えられません。」
セリアリアの聖女、ティーナさんの家。
此処はいつのまにか私達の溜まり場となっていた。
イムヌスだと居心地が悪いものも、そもそも入れない者もいるので、自然とこの場所が溜まり場となった。
ティーナさんの都合もあるので、決めた日以外は来るなと念は押しておいたが。
この連中がどれだけ守ってるのかは怪しいものである。
例によってエイプリルさんの隠蔽魔法で彼女達の認識はされないようにしてあるが。
「フン、まぁ良いわ。
 それで入鹿よ。前回妾が教えた事は覚えて来たか?」
「は、はい。
 なんとか。」
ちなみに入鹿さんは素質があるとか云々で時間魔法とかいうものを覚えさせられている。
最初は入鹿さんも、えー何言ってんのこの人ーという顔だったが、途中からやる気になってきたようだ。
「この力を極めれば、どんな方の耳も堪能できるようになるかもしれません。」
動機は滅茶苦茶不純だったが。
まぁもしかしたら何かに使えるかもしれないので、覚えてもらうとしよう。

「はい。では皆さん。
 一度私の話を聞いてください。」
ティーナさんの机の前に立って、手を叩く。
「これがホワイトパール家の秘儀。
 トランプの裏側見れるウラガーワ君。
 これさえあればー。」
「ちょ、ちょっとずるいわよセイレン!」
「クハハッ。
 なかなか上達が早いではないか、お主。
 まぁ師匠の教え方が上手すぎるから当然かな。フワッハハハハ。」
「………」
私はガトーレーザーを構える。
「あ、あの皆様。
 古都様が皆様にお話があると。」
「そうですよエキドナさん。
 リベンジはまた今度お受けします。」
「く、覚えてなさいよ……」
入鹿さんとティーナさんがフォローする。
本当にまとまりないなこの連中。
私にはアリンさんのようなコミュ力はないので勘弁して欲しい。
「あ?
 あぁ本題か。
 まぁ良い、雨宮古都。
 妾が話すことを許可してやろう。」
「……ありがとうございます。」
ヘタレ魔女のくせにいちいち偉そうである。
「さて、私達は5年か6年ぶりにこうして集まりましたが、
 まずその理由について……」
「マ、マッテー!
 刹那ハ?
 刹那ハドコニイルノー!?」
世良さんが手を上げる。
あぁそういえばそういう名目で連れてきた人(?)も何人かいた気がする。
「刹那さんがいなくなった件とも関係しています。
 いま抱えている問題が解決できれば、再会できるかもしれません。」
「ホ、ホント?
 ダッタラ世良モガンバル!」
まぁほぼないが。
「刹那ついでにアリンも関係あるの?」
今度はコダマさん。
「まぁたぶん。」
正直アリンさんについてはよく分かってないが。
アレは本人的には幸せだったのだろうか。
ぶっちゃけよく見えなかったのだが。
「さて気を取り直しまして、
 こうして集まっていただいた理由ですが……」

私達がいま知っている情報を全員に共有する。
星の中心から七罪魔は何回でも出て来る。
刹那さんはそこから消えた可能性がある。
そういった内容だ。
「ウー、ウー、ウー……」
「……はぁ、なに言ってるのか分からない。」
まったく頭に入ってなさそうな人たちもいるが。
まぁあの辺りには期待していない。
「とにかくその結界だか境界だかがキーって事ね。
 刹那の件も七罪魔の件も。」
コダマさんが要約する。
「平たく言えばそういう事ですね。
 まぁその実物がどこにあるかもまだ分かってませんけど。」
「おいコラ雨宮古都。
 だからその結界は地中10kmの地点に存在すると言っておろうが。」
「聞いてませんが。
 だいたい地中10kmってどこの地点から10kmですか?」
「どこも何もないわ。
 この星の地表全てにおいて、その地中10kmの地点じゃ。」
「………」
星の中心にその境界線とやらがあるのなら。
地上のどこからも侵入できないように対応されてるのは当然かもしれない。
あまりに話が大き過ぎてピンと来ない部分はあるが。
「そんな地中だと、
 そもそも物理的に到達するのがまず大変そうですね。
 穴掘りの名人の知り合いでもいないものでしょうか。」
「はい。地面を凍らせて割る。
 人間達を殺すのに便利な方法よ。」
 発想が氷鬼すぎた。
 どのみち10km底まで凍らせられるとは思えないのだが。
「だったら私の新発明!
 このグレートドリル君33号XZ Ver 1.3 で、
 穴を掘り進めるよー!」
「……どんだけバージョンアップされてるのよそれ。」

その後もあれこれ意見が出るが、どれも決定打にはならない。
これは新たな案が出るまでまた解散かと思ったが……
「エイプリルさん。」
ティーナさんが立ち上がって、エイプリルさんの前に立つ。
「……なんじゃ聖女。
 許可なく妾の前に立つでないぞ。」
「何か知っておられますよね。
 宜しければ話して頂けませんか。」
「……あぁ?」
彼の背丈はエイプリルさんの胸元にも届いていないが、妙な気迫がある。
そういえばこの話題になってから、エイプリルさんはずっと押し黙っていた。
早くも飽きたのだと思っていたが。
「エイプリルさん。
 何か知ってるのでしたら、話して貰えませんか?」
「……黙れ小娘共。
 少しばかり優しくしてやったからと、調子に乗るな。
 妾にとっては単なる暇潰しぞ。」
「でしょうね。
 でもこの場にいるのでしたら、意見くらい出して欲しいものですが。」
「……意見?
 ク、ククククク。クハハッ。」
魔女はさぞ可笑しいとばかりに笑う。
いつものような侮蔑の笑み。そう思ったが。
「………」
ティーナさんはどう認識しているのか。
この村の聖女はいわゆるカウンセラーだ。
人間心理を読む事に長けている。
ここは彼に任せた方がいいかもしれない。
「意見か、良かろう。
 貴様ら、あの結界がなにで機能してるのかは、さきほど雨宮古都が説明していたな。」
「……なんだっけ?」
鈴蘭さんはもう忘れたらしい。
「だったらもう1回説明してやれ雨宮古都。
 それが何を示すかを。」
まぁ言いたい事は理解したが。
「その結界は七罪魔の存在によって機能しています。
 七罪魔が”こちら”側にいると機能する結界。
 まぁ簡単に言うと、七罪魔全てが倒されない限りその機能を停止しません。」
「そうじゃ。
 つまり不可能じゃ!
 分かるじゃろうが!
 いくら貴様らの脳みそがミジンコ並でも!」
魔女は大声で叫ぶ。
あんまり叫ぶと村の住人に何事かと言われそうだが、そこはきっちり隠蔽してるようだ。
人外一行は、あの人急に叫んでどうしたのーこわーいという顔をしている。
「あれ?
 でもそれだと私が死ぬとどうなるんですか?」
ティーナさんが魔女の言うことをスルーして聞く。
この聖女ほんと図太いな。
「………知らん。」
知らないらしい。
でも言われてみればそうである。
七罪魔全員なら当然ティーナさんも含まれてしまう。
世界とやらのために、仲良くなった彼を殺す事を望む者は、おそらくこの場にはいないだろう。
「どうしますか?
 やっぱり止めますか?」
「う〜ん。
 でも他に何か手があるかもしれないし、諦めるのは早くない?
 その結界がどんな構造かにもよるし。」
「そうね。せっかく集まったんだし。」
「刹那二会ウタメニガンバル!」
「ふわぁぁ……」
欠伸をしてる生成生物は置いといて(なんで欠伸なんて機能があるのか)概ねみんなやる気である。
こうなると集めてしまった以上は続けるほかない。
「まぁいいです。
 でしたらやるべき大枠だけ整理しましょう。
 一つはまずこの結界の場所まで辿り着く方法を探す。
 そしてもう一つはティーナさんを殺さず結界を停止させる方法を探す。
 概ねはこの2つですかね。」
はーい、と緊張感ゼロの声が上がる。
まったく頼りにならないように見えるが、各種族のネットワークを使えばそれなりに情報が集まるのではとも考えている。
まぁ正直最終目標まで到達できるとは思えないが。
「………」
エイプリルさんは相変わらずだんまりだ。
おそらく安全に結界のところに辿り着く方法を知っているのだろう。
ただまぁ教えてくれないのであれば仕方ない。
「自分達で考えますか。
 それもまぁ、面白いかもしれません。」
たぶん今回の行動に大した動機はない。
この場にいる連中全員。
だからこれは、単に……

「さぁみんな準備はおっけー?
 おやつは300Gまでだよ!」
「300Gだと傷薬も買えないぞ。」
「なにお子様みたいなこと言ってるのよ。
 此処はスーパーらしく1万Gくらいは……」
「だったら私の新発明、ニセゴールド製造機ゴールダーでー!」
「捕まりますよ。」

「………」
……あの頃の騒がしい冒険の、その続きだ。


そうして私達は。
月詠夜夜子の施設から、結界の場所まで辿り着き。
その結界の明滅状況から残りの七罪魔が半分である事を知る。
それはつまり私達以外でこの件について動いてる人間がいるということ。
そしてエイプリルさんの隠蔽魔法を習得した入鹿さんが定期的に見張りにつき、その正体が元イムヌスの貴族ルキ・サンドドルである事も判明した。
そこには元暗部であった闇月、希殺の姿もあった。

そして間接的に協力してくれたティーナさん、エイプリルさんだったが。
私達の知らないところでティーナさんは亡くなってしまった。
セリアリアの村人達もその件でいろいろ思うところがあったらしく、私の提案で彼等をイムヌスに移住させた。

更にエイプリルさんに関しても、闘争の悪魔の陣営に属してる事がナイツからの報告で判明した。
彼女はナイツに討たれ、亡くなったのだろう。
最期までその真意を理解する事は私達には出来なかったが。

風変わりな聖女も魔女もいなくなり、私達はまた少しずつ疎遠となる。
この件に何年も取り組んで来たため、半ば諦めた者もいたのだろう。
セリアリアがなくなったので集まれる場所も既にない。
それでも。

「あの娘のことは音羽に任せましょう。
 私達は私達で出来ることをするわよ!」

……そう。
偶然も必然もありながらここまで来た。
だったらやり遂げてみたい。
結界破壊だけでは、”まだ”足りないその先。
本当の意味での、世界からの解放を。


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