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3話 聖二の学院生活



……などとまぁ。
俺としては一種の覚悟をして此処に来たわけだが。
(学院ってのは、どうにも面倒なもんだなぁ。)
なんか90分毎に面倒な話を聞かされ(授業とか言うらしい)その後10分休憩。
それが何個も続くという日々。
しかもその授業の内容も自分で選ばないといけないという。
「えぇと、必須授業と選択授業ってのがあるんだっけか。
 魔法史とか魔法論とか魔法を使うのに何の役に立つんだって感じだが。
 そもそも下層でこんなややこしいこと考えて魔法使ってた奴なんかいるのか?」
この授業とやらが何の役に立つのかは俺にはまるで分からん。
「よ、聖二!
 選択授業は何にするか決めたのか?」
「……まだだよ。
 お前はもう決めたのか?」
「ははっ、実を言うと俺もまだ迷ってる。」
ガライ・キーファ。
入学式の時に声をかけて貰って以降、こいつとはつるむ事が多くなった。
別に俺なんかに話しかけなくてもと思わないでもないが、他の連中は初日にグループを作ってしまった。
どうにもグループ間で隔たり的なものがあるのは感じる。
それに加わってなかったのはガライの他にはもう一人。
「……う、うぅ。」
「………」
俺たちを遠巻きに見てる女が一人。
チラリチラリと柱の陰に隠れてなんか葛藤?している。
「……いや、お前はそんなところで何してるんだ?詩織。」
「ご、ごめん……っ。
 なんだか、緊張して……」
恐る恐る俺たちのところにやってくる。
別に取って食ったりはしないってのに。
「はーっ、はーっ。
 わ、私すごい東方の田舎から来たから、
 すっごい緊張して……」
「あ、やっぱり詩織ちゃんは東方出身かー。
 名前がそれっぽいしな。
 聖二も東方出身なのか?」
「……名前?
 名前で出身地が分かるのか?」
いまいちよく分からないが。
ちなみに俺は南方から来たということになっている。
さすがに未来から来ましたなんて吹聴する訳にはいかない。
「成程なぁ。
 でも安心しろよ二人とも。
 これでも俺はイムヌスから来たからな。
 知らないことがあればジャンジャン俺に聞いてくれ!」
「あ、あぁ。
 助かる。」
……イムヌスか。
さすがに魔天獄って呼び方は此処では通じそうにない。
そもそも下層が存在してるのかも分からないが。
(……そういや。)
選択授業にイムヌスTってのもあったな。
魔法学院ってお題目の割に一般的な知識を教えてくれる授業もある。
俺としては助かるところだ。
(まぁいろいろ参加してみるか。
 情報は可能な限り得ておかないとな。)
……だがこの時の俺はまだ学院の真の恐ろしさを知らなかったのだ。

授業とやらが終わって日も暮れる頃。
俺たちは寮という場所に帰る。
一言で言えば寝泊まりするところだ。
「じゃあまた明日な。」
「おう、落ちこぼれ同士頑張ろうぜ。」
「う、うん……」
……なんか変な括りにされてる気がしないでもないが。
まぁ悪い気はしない。
階段を上り、俺にあてがわれた部屋に入る。
その部屋の中には……
「……あ、もういたのか。」
「……いた、けど。」
哀音がいた。
部屋には鍵がかかってたのだが、こいつには無意味らしい。
そして。
「……じゃあ、今日の分は?」
「別に。
 いつもどおりだよ。
 正直ついて行くので精一杯だ。」
俺は鞄を放り投げてそう話す。
だが哀音はどこか不満気な顔だ。
「……そんなんじゃ此処に来た意味がない。
 貴方はやる気があるの?」
酷い言いざまだ。
とはいえ意見としては間違っていないだろう。
俺は学院生活を送るために此処にいるのではない。
「……俺だって遊んでる訳じゃない。
 けど”この周回”は様子見でもありだと思ってる。
 俺たちにはまだ知識が足りない。」
この世界の知識。
ここはあくまで100年前の世界。
俺たちが知らないことはまだまだあるだろう。
それを知るのにはこの場所は好都合と言えるだろう。
「……様子見。
 その様子見のために、貴方はまたあの人を死なせることになる。
 分かってる……?」
「………」
あの人。
雫の元となった少女。
この世界ではまだ奴等に殺されていない。
だがこの学院を卒業する頃には彼女は生きてはいない。
つまりその前にこの学院で協力者を得る必要がある。
いや得ること自体は前段階でしかないのだからもっと早い段階で。
「……けど学院長の女には入学式以来会ってもいないぞ。
 この学院の学生ってのになったのはいいけど、
 立入禁止区画って場所にいるらしくて……」
「……私は認識されないから中に入ることは出来る。
 でも全部の場所に入る事は出来なかった。」
「……そうなのか?
 それはなんで……」
「……たぶんまっとうな人間以外を拒む結界がある。
 さすがに魔法使いの地ってだけの事はあるみたい。」
まっとうな人間以外。
それは俺たちが時の放浪者とやらであることに関係しているのか。
それともこの哀音が人間でなかった事に起因するのか。
「……だったら俺も同じことにならないか?」
「その辺りは調べてみる必要がある。
 貴方は大丈夫、だとは思うけど……」
なんにせよ認識されない方が都合がいい調査は哀音が担当。
俺は認識された方が都合がいい活動を続ける。
すなわち協力者探しだ。
そういう意味ではガライや詩織と知り合えたのも悪い事ではないが。
(……とはいえ相手が相手だ。
 七罪魔のことなんて話しても信じて貰えないだろう。)
……そういや選択授業には七罪魔の関連授業があった気がするな。
それも一応耳を通しておくか。

「……として900年前に、
 覇帝と初代聖女を始めとする者たちによって、
 七罪魔は封印されました。
 その後、彼等は神の采配によりあのイムヌスを作り上げ……」
「………」
神じゃなくて天使とやらじゃなかったか?
そもそも初代聖女は遊ぶ者のせいでイムヌスが出来る前に死んだはず。
時の狭間で張本人の聖女に話を聞いてた俺にとっては、この授業はあまり意味がないように感じる。
しかしこうやって聞くと、歴史なんてもんはあてにならないって事がよく分かるな。
(後の時代の奴等が好き勝手に解釈する。
 それもその時代の権力者の都合のいいようにな。)
とはいえこの時代の奴等から見てどういう解釈をされているか。
協力者を集う目的を考えれば知っていた方がいい事であることに違いはない。
俺は素直に話を聞きながらメモを取ることにした。
(……しかし、なんていうかまぁ。)
不思議な気分ではあった。
元々下層住民だった俺が、こんな学院なんて場所に通うことになるとは。
勿論此処に通うこと自体は目的でもなんでもない。
それは分かっているが。
(悪くはない、気分だな。)
それどころでない事は分かっているが。

そして今日も授業を終え、決まった面子と寮に帰る。
「しかしまだまだ基礎中の基礎って感じの授業ばっかだなぁ。
 なぁ二人とも。」
「え?お、おう。」
基礎中の基礎らしい。
そして学院には恐ろしいものがある事を知る。
「……もうちょっとで最初のテストがあるんだよね。
 私、大丈夫かなぁ。」
詩織が不安気にそう言う。
テスト?
「ま、そう気負わなくてもいいんじゃないか?
 本格的なテストは3カ月後だ。
 今回のは小テストみたいなものだって先生が言ってたぜ。」
……マジか。テストって入学試験だけじゃないのか?
またあんな問題が出てきたら俺じゃ太刀打ちできないぞ。
(……なんたって入学試験は、盛大にカンニングしたからな。)
なにせ俺以外の二人はこの世界に認識されない。
つまりはカンニングし放題である。
しかし俺のテスト対策をしてくれなんて言ったらまた哀音が不機嫌になりそうである。
ぶつぶつ文句を言うので割と厄介だ。
「……聖二君?」
「あ、いや、なんでもない……」
学院生活ってのも大変だな……


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