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14話 交戦開始
「どうよ聖二。
夜会の方に一緒に行ってみないか?」
俺は放課後、ガライに声をかけられる。
前の周でもたしかこんな形で誘われた気がする。
(……敵情視察、を今更しても意味はないか?)
アンヌ・ポルクスが俺の事に気づいている可能性。
それはなくても、インファイトへの催眠が解けていることに勘づいてる可能性はある。
そもそも前回は敵情視察の意気込みで行ったわけではなかった。
襲撃の前に改めて見ておくのも悪くはないか。
「分かった。
時間はあるし、行ってみるか。」
そして俺は二度目の夜会に参加する。
前回同様、ガライ、詩織と共に向かい。
洞穴にてコダマと出会い、彼女とも親しくなる。
「あー、貴方達が最後みたいですねぇ。
早くしてくださぁい。」
前回と同じように、見張りみたいな女の後ろに家が一つ。
外装がやたら黒い家。
だがその前に。
「……今の人も魔法使いなのか?
鎧を着てたし、魔法使いって感じはしないんだが。」
「おいおい何言ってんだ聖二。
あの人はこのカデンツァの警備隊隊長のメイクさんだぜ。
なんか吸血鬼を仕留めたって噂の……」
ガライが説明してくれる。そんなに有名な人物だったのか。
しかしそうなると襲撃の際に今の女とも戦う事になる。
やはり襲撃は一筋縄ではいかなそうだ。
「………」
家の中に入ると、前回同様、同じ黒のローブに身を包んだ奴等が沢山。
そしてそいつらの視線は吸血鬼の黒い羽に集中していた。
「じゃあコダマちゃんも来てくれたことだし、
最初から話すわね。
今日のメインはみんなも見てる”これ”よ♪」
アンヌが前回同様、その羽について愉しそうに説明する。
アンヌ・ポルクス。
俺たちが明日戦う事になるだろう相手。
魔法戦士、ではおそらくない。単純に高いレベルの魔法使い、といった感じがする。
魔力量も、俺や同級生の連中より高い。キリング・アスレイよりも上だろう。
(……魔法属性はなんだ?
事前に知ってれば多少は対策できるが。)
哀音は毎日情報収集の魔法を使っているらしいが。
アンヌ・ポルクスについては未知数だと言う。
十全ではないとはいえ、哀音をもってして未知数という時点でその実力の高さは疑うべくもないだろう。
「……あらあら?
君は不老不死の秘術よりも、お姉さんに興味津々なのかしら?」
……まずい。少し観察し過ぎた。
「い、いえ。
まだ俺はこのカデンツァに来てから日が浅いもので。」
「新入生なんだからそれはそうねぇ。
でも悪くない顔だちね君。
ふふっ。お姉さんもしかしたら誘惑されちゃうかも?」
冗談交じりでウィンクして笑う。(実際冗談だろう)
今のウィンクで隣のガライも少し赤くなってるのが見える。
(……今のは、まずかったか?
いや、単に美人の女教師に見惚れてしまった程度の反応の筈だ。)
ガライの奴がそれらしい反応をしてたなら、他にも似たような奴はいただろう。
そこまで俺が目立った訳ではないはず……
(く、もっとこの家のものを見ておきたかったが。
これ以上ウロウロしてればさすがに怪しまれる。)
俺はおとなしくアンヌの話に集中することにした。
前回同様コダマが席を立ち、俺たちもそれに倣う。
「そういえば貴方、もしかしてあの先生に惚れでもしたの?」
コダマがそんな事を聞いて来る。
「は、はは、そうだな。
ちょっとばかし顔をまじまじと見つめ過ぎたな。」
「……そ、そうなの?聖二君?」
「ははっ。だがお前だけじゃねぇぜ安心しろよ。
俺もすっかりやられちまったわ。」
適当に誤魔化す。
俺がこの家に明日襲撃を仕掛けようとしてるなんて微塵も思っていないだろう。
(……もし。)
こいつらに協力を求めたら。
俺に、力を貸してくれるだろうか?
「おや、怖がらせてしまったかな。
君たちは夜会の帰りかな?」
前回同様、キリングと遭遇する。
もしこの男が力になってくれれば、心強い事だろう。
「……聖二?」
だが駄目だ。
これは俺たちの戦いなんだから。
巻き込む訳には行かない。
……もう、御免なんだ。
「ねぇメイク。」
私は夜会が終わってすぐに、メイクを家の中に招いた。
「なんですかぁ?
私、これから忙しいんですけど。」
「貴方が最後に案内した子たち、覚えてる?」
「あー、あのコダマっていう子?
貴方が夜会に入れたがっていた子でしたっけぇ?」
「そうだけど、それは今はいいの。
コダマちゃんと一緒に来た黒髪の男、いたでしょ?」
「あー、そうでしたっけぇ?
いちいち全員の顔なんて覚えてないですけどぉ。」
「その男、明日の放課後に尾けておいてくれないかしら。
勿論報酬は奮発するわよ。」
「……ふーん。」
このタイミングで私のところに来るなんて。
行動が素直すぎる。
罠の可能性を疑った方がいいわね。
本命の戦力がいるかもしれない。
そして次の日の夜。
俺たちは再び洞窟の前に集まっていた。
「……まさか。
聖二、そなた一人だけか?」
「あぁ。
他の奴等は遅れてやってくる。」
俺はインファイトと落ち合う。
無論、哀音とリオンは既にその場にいる。
ただインファイトには認識されないだけだ。
「成程。何か手あり、ということか。
まぁ私も無策で此処に来た訳ではない。」
どうやら納得してくれたようだ。
さすがに二人だけで魔女の家に突入するとは思われていないのだろう。
(……では予定通り、私はこの場で待機する。
無茶はするなよ、二人とも。)
(……うん。)
(……あぁ。)
インファイトがいるので眼だけで会話をする。
本当に会話できてるかは怪しいが。
今は夜中の0時。
寮の連中はとっくに眠っている時間だ。
アンヌ・ポルクスが眠っているかは分からないが。
もし眠っていればアドバンテージを取れるが。
「……行くか。」
「うむ。」
「………」
俺とインファイトが前衛。
哀音が後衛のフォーメーションで歩く。
まぁ周りからすれば男二人しか見えない訳だが。
昨日も訪れた魔女の家。
見たところ明かりはついていない。
元々からして外装が真っ黒な家だ。
夜の暗さと合わさって目が慣れるまではドアの場所すら判別がしにくい。
(……もう寝ているのか?
いや油断は出来ない。)
此処はカデンツァ内だしそこまで警戒している訳ではないだろうが。
最低限の警戒態勢はとっているだろう。
俺たちは少しずつ家に近づく。
だが。
「……ゴーレム。この馬鹿どもを踏みつぶせ。」
その気配は後ろからやって来た。
大きな音を立てて何かが俺たちの後ろに現れる。
その姿は。
「アイアン……ゴーレム……っ!!」
巨大な岩の怪物、ゴーレム。
だがその強度は鋼鉄並。
生成魔法。
ならばその使い手は。
「レラインかっ……!」
俺の知ってるレラインはもっとゴーレムのレベルが低かった気がするが。
そもそも同一人物な訳もないのだから関係はない。
そして。
「ふぁあぁぁ。
待ちくたびれたわよ、聖二君。
まったく夜更かしはこの歳になるとお肌の天敵なのよ。
なんて……魔法使いには関係ないけどね♪」
家の前にはいつのまにか全身漆黒の魔法使い。
アンヌ・ポルクスの姿がそこにあった。
「……やっぱ昨日の言動で勘づかれてたか。」
「当然。
レラインの兄上君の精神状態は私が把握しているわ。
異常があれば当然気づくし、誰かが介入した事なんて簡単に予想がつく。
ま、あのお嬢様は私に言われるまで気づかなかったみたいだけど。」
お嬢様、とは。
おそらく。
「……なんで、なんで、なんで。
みんな私の思い通りにならない。
本当にムカつく。貴方”も”、もう要らない……」
「……レライン。
その意味、今こそ喋ってもらうぞ。」
インファイトがレラインと対峙する。
もうあの男はその覚悟を固めている。
ならば。
「俺の方は本命と行くか。
悪いが殺す気で行かせてもらうぜ。
お行儀のいい魔法戦じゃ勝ち目はないからな。」
「あら出来るのかしら?
見たところ”そっち”の才能もそれほどあるように見えないけれど。」
俺は剣を抜く。
強力な魔法を撃たれる前にアンヌを倒す。
出来れば殺さないで話を聞きたいが、そんな悠長なことが出来る相手ではない。
(……死んだらその時はその時だ。
行くぞ。)
先手必勝。
俺は一足飛びでアンヌとの距離を狭めた。
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