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23話 ただ目的のために
結論から言おう。
俺は準決勝に勝利した。
「……なんだ、今のは?」
対戦相手の磯貝有馬は何が起こったのか分からないという顔をしている。
試合を見ていた奴の中にも同じ感想を抱いた者はちらほらいる事だろう。
「勝者は封座聖二!」
だがここは魔法使いの都。
なんらかのオリジナル魔法と言われてしまえばそれまで。
そして個人のオリジナル魔法は秘されているからこそ意味がある。
ゆえにラークは俺の勝利を宣言する。
「ハイド先輩!
今のはどういった魔法なんでしょうか?」
「……いや。
俺にも分からない。」
ハイド・サンドドルも怪訝な顔で俺の方を見ていた。
だが疑惑でも興味は惹かせた。
(無関心が一番問題だからな。
ただやり過ぎると敵対関係になるかもしれない。)
俺より格上である3年でもハイド・サンドドルの相手にはならなかった。
だったら俺は順当に戦えばあっさりと敗北するだろう。
そこに俺への関心が生まれることはあるか?
ある訳がない。
(まぁ、実のところこうしないと勝てなかった。
それだけの話だけどな……)
俺は先ほどの試合を回想する。
最初は順当な試合の運びだった。
俺が徐々に押されてるという意味で。
「成程、相当特訓してきたと見える。
だが所詮は付け焼き刃だ。」
相手の磯貝有馬は典型的なオールラウンダー戦法。
俺には魔法を撃たせないように牽制、または物理的な攻撃を加えつつも。
同時に僅かな隙を突いて魔法詠唱を終え、強力な魔法の一撃を加える。
早い話が完全な俺の上位互換。
全ての能力が俺を上回る相手に対し、突ける隙などない。
最初の方はLv1魔法のみを食らっていたが、ついにLv2魔法を受ける程の隙が出来てしまった。
「良い戦いだった。
2年後、更なる成長を期待している。」
とどめの魔法が詠唱される。
(……俺に、この都に2年後なんてない。)
だから。
「……え?」
突如の強風。
それは奇しくも磯貝の態勢を崩し、逆に俺は磯貝に接近する絶好の機会となった。
「スライドっ!」
更に”念”を推す。
ついに磯貝は完全に背中から倒れる形となった。
こうなってしまえばもはや単なる的。
「フリーズ!」
「……マジか、あいつ。」
「本当に、さっきのは何だったんだ……?」
これで俺は決勝に駒を進めた。
1年が3年を破り決勝進出ということで、もはや誰もが俺に注目していた。
「すごいな、聖二君!
いったい今のはどうやったんだ!?」
「……あ、あぁ。
まぁ今のは俺の切り札みたいなもんだから、それはまぁ、な。」
興奮するキリングの質問を誤魔化す。
それで納得したのだろう。キリングは次は私の番だと意気揚々に自分の試合に向かう。
「私も、恥じない戦いをして来よう。
見ていてくれ!」
(……あぁ、勿論見ているよ。)
ハイド・サンドドルの戦いは1回でも多く注視する。
決勝で俺が少しでも戦いを有利にするために。
それくらいやらないと、おそらく戦いにすらならないだろうから。
胸の痛みは消えない。
少なからず罪悪感が俺の中にある。
努力を重ねて真摯に向かって来た相手に対し、あのような勝ち方。
恥じた戦い。そんなことは分かっている。
だが。
(……時間がないんだ、俺には。)
「さぁ残るは2試合だ!
1年のエース、キリング・アスレイ!
対するはチャンピオン、ハイド・サンドドル!
さぁどこまでやれるか1年!奇跡は起きるのか!?」
「あぁ、起こして見せよう!
聖二君のように!」
試合が始まる。
キリングは速攻で接近戦を仕掛ける。
だがハイドは危なげなく受け流し、逆にキリングに一撃を与えた。
「くっ!?」
更に後押しで電撃魔法が入る。
こうなってしまえばもう終わり。
あっけない。
そんな感想が試合を見ている者たちの内心だっただろう。
(だが、キリングには。)
一方的に攻撃を受けていたキリングの身体が崩れる。
それは炎となりハイドに襲い掛かった。
「……ほう。」
ハイドが感心の声を上げる。
キリングのオリジナル魔法クリムゾンイメージ。
試合が始まる前から詠唱を”ほぼ”終わらせていた、とでも見るべきか。
単なる熱血漢などではない。器用に勝利を目指した戦術。
(あんな芸当は俺には到底無理だ。)
根本的に魔法技術が追い付かない。
俺があのレベルに達するのにどれだけかかるのか。
そもそも時間でどうにかなるものなのか。
今の俺には分からなかったが。
(だがキリングの狙いは分かる。
その結末も含めて。)
炎の幻影は囮。
直感でそう思うだろう。
だが違った。
幻影の炎と一緒になってキリングは攻勢に出ていた。
自殺行為にも等しい反撃。
だがそれくらいしないとハイドの隙を突く事など出来ない。そう考えたのだろう。
「おおおおおおぉぉぉっっ!!」
その反撃は確実にハイドにダメージを与えていた。
ハイドの身体が僅かにぐらつく。
「……見事だ。驚嘆に値する。
”本来なら”この戦いは貴様の勝ちだ。
だが。」
瞬間。
その”身体”が光に包まれた。
「……あれは?」
見ている連中が光に目が眩んでいたその一瞬の間に。
キリング・アスレイはリングの底に沈んでいた。
「……限界、か。惜しかったな。」
「だがすげぇぜ、キリング・アスレイ!
あれで1年かよ!?」
「素晴らしい戦いだった!」
キリングを賞賛する拍手が響く。
この場の共通認識は無茶をし過ぎたキリングの自爆。
そう見えただろう。
だが事実は違う。
(……今の光。
人間のものじゃないだろ?)
(……うん。
今の光は、天使の光。
たぶん天使の力を一瞬だけ使用した……)
哀音に確認を取る。
どうやら反則してるのは俺だけではなかったらしい。
キリングは担架で運ばれながら。
「……はは、力及ばなかった。
己の未熟を恥じる。
聖二君のような奇跡は起こせなかったようだ。」
そんな言葉を俺に残していった。
羨望の眼差しを俺に向けながら。
(……違う。違うんだ。
本当に自分の力だけで真実立ち向かったのは、お前だけなんだ。)
俺は心から自分の戦いを恥じる。
まともに戦わなかったんだ。俺も。ハイド・サンドドルも。
あいつに真実を教えてやりたい。
ただ純粋に賞賛したい。
だがそんな事は許されない。
俺は決勝戦のリングに向かう。
(……どうするの?)
(先程のレベルじゃ奴には隙すら出来ない。
本気でやってくれ。)
(……分かった。
でもそれだと1回しか介入できない、と思う……)
(分かっている。)
なんてことはない。
先程の俺の戦いの勝因は哀音の横やりだった。
1vs1が約束された戦いで、他人からの横やりに反応出来る人間など殆どいない。
ましてや認識できない存在の横やりなど。
「さぁついに決勝だぜおまえら!
戦うは決勝まで勝ち上がった1年!封座聖二!
対するはチャンピオン!ハイド・サンドドル!
笑っても泣いてもこれが最後だぁ!」
俺とハイド・サンドドルがリングに上がる。
両者ともに万全ではない。
もちろん試合前には傷薬による前試合の治療が行われるが。
魔力まで完全回復とはいかないからだ。
だが結局のところこの夜会はお祭り。
細かいことは言いっこなし。
此処の連中はそれで良いと思ってるんだろうし、後腐れなくその結果をみんな受け入れている。
だが。
「先ほどの魔法。
本当に貴様の魔法か?」
この場の二人を除いて。
「さぁな。
そういうあんたはどうなんだ?
ハイド・サンドドル。」
「……ほう。」
目の前の男の全身から闘気が溢れる。
半端な気迫レベルではない、本物が発する圧力。
「いいだろう。
後悔するなよ。」
「後悔なんていつもしてるよ。
今に始まったことじゃない。」
だがどこか。
その闘気には苛立ちが込められているように思えた。
「決勝戦、開始!」
試合開始の宣言。
その瞬間に。
……会場は巨大な竜巻に覆われた。
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